2013年12月18日 諸宗教対話フォーラムごあいさつ

グローバル化が加速を続ける21世紀の現代社会は、文字通りの本格的な多次元化社会に突入したと謂えます。多元化社会とは異なる人種や民族、思想や宗教、文化や文明を所有する人間どうしが、ひとつの社会に共存する事態を指しています。そしてこの多元化社会で発生する重大な問題こそが、異なる価値観の衝突による対立であり、世界の各地における紛争の勃発に他なりません。場合によってはその解決に暴力的手段が用いられるという最悪の事態に陥ってしまい、一般市民が苦悩の淵に追い詰められるという現実に直面しています。

この異質な価値観の相克を超えて、調和的な解決に導く為の唯一の手段が「対話」です。そして、21世紀はいかなる組織・集団であれ、この「対話」の成果が新たな価値創造に多大なる貢献を果たします。逆に対話に失敗した場合、他者との対立が更に深刻な状況に到り、最終的にはコミュニティの分裂を招き、やがては絶望的な衝突と崩壊、そして殺戮の途を辿ることになるとされています。かくして21世紀の新たな価値創造のためには、「対話」を基軸として歴史が進化する対話文明社会の到来が期待されています。

以上のような社会背景に基き、爰に採り上げる宗教対話とは、単に諸宗教間の対話だけを指すものではありません。現代社会の複雑で多岐に亘る諸問題の抜本解決の為には、宗教と他の多くの知的異分野との対話が求められているからです。即ち、この対話の汎用範囲は驚くほど広く、国家・民族・時代・社会・家庭・個人を巻き込み、それらの難題を抜本的レベルからの解決を実現する有力な緒口とシナリオを与えてくれるはずです。

日本の宗教界が注目すべきは、欧米における宗教が過去の歴史に於て、いかに近代思想との深刻な対話と苦悩を経て現代に到達したか、その重い思想的な事実を見逃してはなりません。しかるに残念ながら、日本の宗教界の伝統には、その知的試練の歴史が欠落していると言わざるを得ません。即ち、日本の伝統を有する宗教界に急務な課題は、現代社会の諸問題に苦悩する自然科学・社会科学・人文科学との広範囲な対話に基く「知」の営みから多様な気付きに目醒め、そこに宗教者自身の真摯な求道の姿勢が求められています。

この対話による統合的価値の創造に向かう潮流は歴史の必然であり、最早や未来に向けて人類が避けて通ることのできない現代における歴史命題です。

平成25年12月18日

現代宗教対話協議会