日蓮宗は、西暦1253年、日蓮聖人(1222〜1282年)によって開創された、約760年の歴史を有する日本における伝統仏教の1つです。
日蓮聖人は、当時、同じ仏教でありながら、互いに宗派的勢力の争いばかりに腐心していた旧来の仏教諸宗が、仏教の改組釈迦牟尼仏の根本精神に立ち戻り、新たな仏教の統合的見地を切り開く為の「統合の原理」を提示すべく、法華経の教えの中にその明確な根拠を見出されたのです。
すなわち、この法華経には、この地上におけるあらゆる異なる宗教、異なる思想的な対立を回避し、多様性を活かしつつ結合を可能とする開墾の思想(すべてのこの世界と共にある、人間を含む万物・万象の根底には、本来的にもとから、互いが互いの性格を具有する相互互換の関係性を共通な前提として共有しており、この原理原則が、この世界の実在の根本的根拠となっている、その隠された事実を開き顕わすこと。)が遺憾なく説き明かされていたのです。それは文字通り、人類にとっての永遠の課題である対立の関係を共存の関係へと導く際の最大且つ最高の条件が、明確に提示されたという意味でもありました。
ところで、この法華経では、深遠な教理を巧みな譬喩を通し示されています。その中に新約聖書のイエス・キリストに関する比喩を彷彿とさせる箇所があります。そこでは釈迦牟尼仏が、火で燃え盛る家の中から自分の子供を救い出す父に譬えられています。また誤って毒を飲んだ我が子を癒す医者である父。放蕩息子を再び我が家に迎える父にも譬えられています。
この点において法華経が救済する対象が明確に浮かび上がってきます。それは人間にとっての日々の生活、社会と向き合う時に生じる様々な現実的課題そのものです。つまり法華経の教えの基底には、単なる精神統一の為の苦行を進めたり、現実から観念の世界に逃避する考え方はありません。むしろ人間個々にとっての、また社会的に好ましくない現実に対し、抜本的な革新を断行し、実践する上で不可欠な人間としての正しい主体性を復権する為に、現代において求められる創造的価値観が、明確に説き明かされています。
その考えの根幹に位置づけられているのが、「一念三千の原理」であり、そこにはこの宇宙全体と、そこに存在する一切の人間を含む万物の有機的相互依存の連環によって成立する実在の根拠が明確に示され、それを認識する為の思考の原型(モデル)が「統合の原理」として、日蓮聖人によって遺憾なく解明されているのです。そこから導き出される考え方には、以下のような内容が含まれています。
- すべての生物と物質、自己と客体、精神と宇宙が完全な思想的・実証的裏付けのもとに密接に相互依存の関係で結びついている。
- したがって人間にとっての現実的環境に対する抜本的革新は、原理的において可能であり、人類の運命もまた人間に本来的に備わる自己組織化機能によって創造的に開拓することが出来る。
- 人間は、あらゆる立場の相違を超えて平等であり、法華経の「一念三千の原理」に見られる多様性の価値を活かしつつ、統合の可能性を実現する有機的統合の価値観を共有することにより、人間相互の尊厳性が確認され、無意味な対立・抗争を激減させることが出来る。
最後に日蓮宗は日本国内に存在する多くの伝統教団の中で、規模において第5番目の規模を誇り、信徒は約200万人、僧侶は10000名、寺院は5000ヶ寺に及ぶ。
日蓮宗基本情報
名称 宗教法人 日蓮宗 (Nichiren syu)
祖山 総本山 身延山久遠寺
〒409-2593 山梨県南巨摩郡身延町身延3567 地図はこちら(Google Map)
事務所 日蓮宗宗務院
〒146-8544 東京都大田区池上1-32-15 地図はこちら(Google Map)
管長 内野 日総(Uchino Nitsusou)
宗務総長 代表役員 小林 順光(Kobayashi Junkou)
寺院数 5177ヶ寺(2011.3.31日現在)
僧侶数 8227名(2011.3.31日現在)